EUにおけるアルロース(Allulose)の学術的研究

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アルロースを摂取すると、食後30分の血糖値が平均20%も低下する。これは糖尿病予防にとって画期的な発見ではないか?

近年、低カロリー甘味料「アルロース」が健康志向の高まりとともに注目を集めています。自然界にわずかしか存在しない希少糖の一種であるアルロースは、砂糖の約70%の甘さを持ちながら、カロリーはわずか0.4kcal/g以下と極めて低いのが特徴です。

特に欧州連合(EU)では、肥満や糖尿病の増加に伴い、アルロースに関する学術研究が活発に行われています。砂糖に代わる健康的な甘味料として、その可能性が科学的に検証されつつあるのです。

この記事では、EUにおけるアルロースの学術的研究について、最新の知見をわかりやすく解説します。血糖値管理やダイエットに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

目次

アルロースとは?基本的特性と研究背景

アルロースは「D-プシコース」とも呼ばれる希少糖の一種です。化学的には果糖(フルクトース)のC-3エピマーであり、天然では無花果(いちじく)やレーズンなどにごく微量に含まれています。

砂糖(スクロース)が1gあたり4kcalのエネルギーを持つのに対し、アルロースは0.4kcal/g以下とされ、実質的にはノンカロリーの甘味料と言えます。この特性から、低カロリー食品や糖尿病患者向け食品への応用が期待されています。

EUでは2010年代から、アルロースの生理的効果や安全性に関する研究が本格化しました。特に、血糖値への影響やインスリン反応、体重管理に対する効果について、多くの科学的知見が蓄積されています。

アルロースが注目される背景には、EU圏内での肥満率の上昇があります。欧州委員会のデータによれば、EU加盟国の成人の約52%が過体重(BMI 25以上)であり、そのうち約17%が肥満(BMI 30以上)とされています。こうした健康課題に対応するため、砂糖摂取を減らしつつ甘味を楽しめる代替甘味料の研究が進められているのです。

また、欧州食品安全機関(EFSA)による甘味料の再評価も、アルロース研究の推進力となっています。従来の人工甘味料に代わる、より自然由来の代替品としてアルロースが位置づけられているのです。

アルロースの代謝特性と血糖値への影響

アルロースの最も注目すべき特性は、血糖値への影響の少なさです。通常の砂糖を摂取すると、消化・吸収によって血中のグルコース(血糖)濃度が上昇します。しかし、アルロースは体内でほとんど代謝されず、約90%が吸収されずに排出されます。

EUの研究チームによる臨床試験では、砂糖の代わりにアルロースを摂取した場合、食後の血糖値上昇が有意に抑えられることが確認されています。特に、5〜10gのアルロースを摂取すると、食後30分後の血糖値が平均して約20%低下することが複数の研究で一貫して示されています。

カイザー・ハイルドルフ大学(ドイツ)の研究グループは2018年、健康な被験者30名を対象にした二重盲検クロスオーバー試験を実施しました。この研究では、50gのスクロース(砂糖)とともに、アルロースを7.5gまたは10g摂取した群では、プラセボ群と比較して食後血糖値が有意に低下したことが報告されています。

さらに興味深いことに、アルロースはインスリン分泌にも穏やかな影響を与えます。インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、過剰分泌が続くとインスリン抵抗性につながる恐れがあります。アルロースを摂取すると、急激なインスリン分泌が抑えられ、血糖値の変動が穏やかになるというデータが得られています。

こうした特性は、糖尿病予防や血糖値管理に悩む人々にとって朗報と言えるでしょう。特に、糖尿病予備群や境界型糖尿病の方にとって、アルロースは砂糖の代替として有効な選択肢となる可能性があります。

アルロースの脂肪代謝と体重管理への効果

アルロースは単に血糖値に影響するだけでなく、脂肪代謝にも作用することがEUの研究で明らかになっています。これは特に、肥満対策や体重管理の観点から注目されています。

マドリッド自治大学(スペイン)の研究グループは、アルロースが脂肪酸の酸化(燃焼)を促進し、炭水化物の酸化を減少させる効果があることを報告しています。健康な被験者を対象とした実験では、アルロースを摂取した後、体がエネルギー源として脂肪を優先的に使用する傾向が観察されました。

この効果は、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンの分泌増加と関連していると考えられています。GLP-1は食欲を抑制し、インスリン分泌を促進する作用があります。アルロースがGLP-1の分泌を約5倍に増加させるという動物実験のデータもあり、これが食欲抑制や体重管理につながる可能性が示唆されています。

さらに、長期摂取の効果に関する研究も行われています。ウプサラ大学(スウェーデン)の研究では、12週間にわたり1日2回アルロースを摂取した被験者グループは、プラセボ群と比較して体脂肪率と体脂肪量が有意に減少したことが報告されています。特に、7g×2回/日のアルロースを摂取したグループでは、腹部内臓脂肪と皮下脂肪の減少が確認されました。

これらの研究結果は、アルロースが単なる低カロリー甘味料としてだけでなく、積極的に脂肪代謝を改善し、体重管理をサポートする機能性成分として働く可能性を示しています。EU圏内で増加している肥満問題に対する新たなアプローチとして、アルロースの活用が検討されているのです。

アルロースのインスリン感受性と糖尿病予防への応用

糖尿病、特に2型糖尿病の発症や進行には、インスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなる状態)が深く関わっています。EUの研究者たちは、アルロースがインスリン感受性の改善に寄与する可能性についても詳細な調査を行っています。

コペンハーゲン大学(デンマーク)の研究グループは、高ショ糖食を与えたラットモデルにおいて、アルロースの摂取がインスリン抵抗性を改善することを示しました。この研究では、特にAkt(プロテインキナーゼB)というタンパク質のリン酸化が促進され、筋肉や脂肪組織でのインスリンシグナル伝達が活性化されることが確認されています。

また、境界型糖尿病患者を対象とした臨床試験も実施されています。ミラノ大学(イタリア)の研究では、食事の前に5gのアルロースを摂取することで、食後の血糖値上昇が有意に抑制され、長期的なHbA1c値(過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する指標)の改善につながる可能性が示唆されました。

さらに興味深いのは、アルロースが膵臓のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)を保護する効果です。動物実験では、アルロースの長期摂取によりβ細胞の機能が維持され、糖尿病の進行が遅延することが報告されています。この効果は、酸化ストレスの軽減や炎症性サイトカインの抑制などの複数のメカニズムを介して実現されると考えられています。

これらの知見から、アルロースは単に血糖値を一時的に下げるだけでなく、インスリン感受性を高め、糖尿病の発症や進行を予防する可能性を持つことが示唆されています。EUでは、糖尿病患者の食事療法や予防医学の観点から、アルロースの臨床応用に向けた研究が進められています。

EUにおけるアルロースの安全性評価と規制状況

新しい食品成分や添加物をめぐっては、有効性と同様に安全性の評価が重要です。EUではアルロースの安全性についても、欧州食品安全機関(EFSA)を中心に詳細な検証が行われてきました。

2022年9月、EFSAはアルロースの安全性評価を完了し、提案された使用条件下での摂取は安全であると結論付けました。この評価は、動物実験や限られたヒト試験のデータに基づいて行われたものです。

EFSAの評価によると、アルロースは通常の摂取量では消化管からの吸収が限られており、体内での代謝もほとんどないため、安全性のリスクは低いとされています。ただし、一度に大量摂取(体重1kgあたり0.4g以上)すると、一部の人で消化器症状(腹部膨満感、鼓腸、軟便など)が現れる可能性があることも指摘されています。

規制の観点では、アルロースはEU内で「新規食品(Novel Food)」として分類されています。新規食品とは、1997年5月15日以前にEU域内で相当量の食用歴がない食品のことを指します。新規食品として認可されるためには、安全性評価を通過し、欧州委員会による承認が必要です。

現在、アルロースはEUにおいて食品添加物としての正式承認手続きが進行中です。アメリカでは既にFDA(食品医薬品局)によってGRAS(一般に安全と認められる)認定を受けており、食品への使用が認められていますが、EUではより厳格な評価プロセスを経る必要があります。

また、アルロースのカロリー表示に関する規制も注目されています。米国FDAは2019年、アルロースを「総糖」や「添加糖」のカウントから除外することを許可しました。EUでも同様の規制変更が検討されており、これが実現すればアルロースを使用した低糖・低カロリー食品の開発が一層促進されるでしょう。

アルロースの神経保護効果と抗炎症作用に関する新知見

近年のEU研究では、アルロースが持つ可能性として、血糖管理や体重管理だけでなく、神経保護効果や抗炎症作用についても注目されています。これらは特に加齢関連疾患の予防という観点から重要な発見です。

ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)の研究グループは、アルロースが脳神経細胞を保護し、神経疾患の治療に役立つ可能性を報告しています。特に注目されているのは、一時的な脳虚血(血流不足)によって引き起こされる神経細胞のダメージをアルロースが軽減するという知見です。

この効果のメカニズムとしては、アルロースが脳内の抗酸化システムを強化し、酸化ストレスから神経細胞を守ることが示唆されています。また、神経保護因子の発現を増加させる作用も確認されており、これが神経変性疾患の予防に役立つ可能性があります。

一方、アルロースの抗炎症作用も複数の研究で報告されています。慢性的な低グレード炎症は、糖尿病、心血管疾患、神経変性疾患など様々な生活習慣病の基盤となることが知られています。

オックスフォード大学(イギリス)の研究では、アルロースがTNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)などの炎症性サイトカインのレベルを低下させることが確認されました。特に、HSA群(高用量のアルロースを摂取した群)では、対照群と比較して炎症マーカーの有意な減少が観察されています。

これらの発見は、アルロースが単なる低カロリー甘味料としてだけでなく、多面的な健康効果を持つ機能性成分として利用できる可能性を示しています。認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患の予防・改善に役立つという仮説も提唱されており、この分野での臨床研究がEU圏内で加速しています。

アルロースの腸内環境改善効果と代謝健康への影響

近年の研究では、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)が全身の健康、特に代謝健康に大きな影響を与えることが明らかになっています。EUの研究者たちは、アルロースが腸内環境に与える影響についても、詳細な調査を行っています。

マーストリヒト大学(オランダ)の研究グループは、アルロースが腸内細菌叢の組成に好ましい変化をもたらす可能性があることを報告しています。特に、ビフィドバクテリアや乳酸菌などの有益な細菌の増殖を促進し、炎症に関連する細菌の割合を減少させる効果が観察されました。

アルロースは小腸で吸収されにくく、その多くが大腸に到達します。大腸では腸内細菌によってアルロースが発酵され、短鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸、酢酸など)が産生されます。これらの短鎖脂肪酸は、腸粘膜の健康維持や免疫調節に重要な役割を果たしています。

また、腸内環境の改善が代謝健康全体にも良い影響を与えることが示唆されています。ヘルシンキ大学(フィンランド)の研究では、アルロースの摂取により、腸管バリア機能が強化され、腸からの炎症性物質の漏出(リーキーガット症候群)が抑制されることが報告されています。

これらの効果は、アルロースが持つ抗炎症作用や代謝改善効果を媒介するメカニズムの一つと考えられています。腸内環境の改善を通じて、肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患などの代謝疾患のリスク低減にも寄与する可能性があります。

EUでは、プレバイオティクス(腸内の有益な細菌の増殖を促す食品成分)としてのアルロースの可能性にも注目が集まっており、腸内細菌叢と代謝健康の関連という文脈でのさらなる研究が期待されています。

アルロースを用いた機能性食品開発と産業応用の動向

EUにおけるアルロースの学術研究の進展に伴い、それを活用した機能性食品の開発も活発化しています。特に、血糖値管理やダイエットをサポートする食品分野での応用が注目されています。

大手食品メーカーやベンチャー企業を中心に、アルロースを配合したダイエット飲料、低糖質デザート、糖尿病患者向けの特殊食品などの開発が進められています。ネスレ社(スイス)やダノン社(フランス)などの大手企業も、研究開発部門でアルロースの可能性を探っていることが報告されています。

特に、以下のような食品カテゴリーでのアルロースの活用が期待されています:

  1. 低糖質飲料:炭酸飲料やスポーツドリンクなど、従来の砂糖を使用した飲料の代替品
  2. ベーカリー製品:パンやケーキなど、従来の高糖質食品の低糖質バージョン
  3. 乳製品:ヨーグルトやアイスクリームなど、甘みを維持しつつ糖質とカロリーを抑えた製品
  4. 栄養補助食品:血糖値管理や体重管理をサポートするためのサプリメント

EUの食品企業では、アルロースの味わいに関する研究も進められています。アルロースは砂糖に近い甘味プロファイルを持ちますが、冷感(cooling effect)や後味の違いなど、砂糖とは異なる特性もあります。これらの特性を理解し、最適な配合比や加工条件を見出すための官能評価研究が行われています。

また、アルロースの大量生産技術の開発も進んでいます。現在、工業的なアルロース生産は主に酵素法によって行われていますが、生産効率の向上やコスト削減のための新技術開発がEU圏内の企業で進められています。例えば、遺伝子組換え技術を用いた高効率なアルロース生産菌の開発や、連続生産プロセスの確立などが研究されています。

こうした産業応用の進展により、将来的にはより多くのアルロース含有製品がEU市場に登場することが予想されます。ただし、新規食品としての規制プロセスや消費者の受容性など、市場導入にはいくつかの課題も残されています。

アルロースと口腔健康:虫歯予防と歯周病対策への応用研究

EUの歯科研究分野では、アルロースが口腔健康に与える影響に関する研究も進められています。特に注目されているのは、虫歯予防と歯周病対策への応用可能性です。

通常の砂糖(スクロース)は、口腔内の細菌によって発酵され、酸を生成します。この酸が歯のエナメル質を溶かし、虫歯の原因となります。一方、アルロースは口腔内の細菌によってほとんど代謝されないため、酸の生成が少なく、虫歯リスクが低減される可能性があります。

ストックホルム大学歯学部(スウェーデン)の研究では、アルロースが虫歯原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)の増殖を抑制する効果が確認されています。特に、D-タガトース(アルロースと類似した希少糖)が、S. mutansの増殖や活性を効果的に抑制することが示されています。

また、アテネ大学(ギリシャ)の研究グループは、アルロースが歯周病原因菌(P. gingivalisなど)の増殖を抑制する可能性を報告しています。歯周病は成人の歯を失う主な原因の一つであり、全身の健康にも影響を与えることが知られています。アルロースが歯周病の予防や進行抑制に役立つとすれば、口腔健康の維持に大きく貢献することになります。

これらの研究結果に基づき、アルロースを配合した歯磨き粉や洗口剤、ガムなどの開発も検討されています。特に、糖尿病患者は歯周病のリスクが高いことが知られていますが、アルロースを活用した口腔ケア製品は、血糖管理と口腔健康の両面でサポートできる可能性があります。

EUでは、口腔健康と全身健康の関連性に注目が集まっており、アルロースの多面的な健康効果を活かした統合的なアプローチが研究されています。

アルロースの研究における方法論的課題と今後の展望

アルロースの学術研究は飛躍的に進展していますが、いくつかの方法論的課題も存在します。EUの研究者たちは、これらの課題を克服しつつ、より信頼性の高いエビデンスを構築するための取り組みを進めています。

現在の研究における主な課題には、以下のようなものがあります:

  1. 被験者数の制約:多くの臨床試験は比較的少数の被験者を対象としており、結果の一般化に限界がある
  2. 研究期間の短さ:長期的な影響を評価するための研究が不足している
  3. 対象者の多様性:異なる年齢層、人種、健康状態を持つ人々での効果の違いに関するデータが限られている
  4. 作用メカニズムの解明:分子レベルでの詳細なメカニズムが完全には解明されていない

これらの課題に対処するため、EUでは複数の研究機関が連携した大規模な国際共同研究が計画されています。例えば、「Horizon Europe」プログラムの一環として、アルロースの健康効果を包括的に評価するための多施設共同研究が提案されています。

また、個別化医療の観点からのアプローチも注目されています。同じアルロースでも、個人の遺伝的背景や腸内細菌叢の違いによって効果に差が生じる可能性があります。EUの研究機関では、このような個人差を考慮した「パーソナライズド・ニュートリション」の文脈でアルロースを位置づける研究も始まっています。

将来的には、以下のような研究の進展が期待されています:

  1. 大規模かつ長期的な臨床試験による健康効果の検証
  2. 精密なバイオマーカー分析による作用メカニズムの解明
  3. 様々な健康状態(肥満、糖尿病、代謝症候群など)におけるアルロースの効果の比較
  4. アルロースと他の食事成分との相互作用の研究
  5. アルロースを活用した個別化された栄養介入プログラムの開発

これらの研究の進展により、アルロースの科学的根拠がさらに強化され、より効果的かつ安全な応用が可能になることが期待されています。

アルロースの効果的な摂取方法と実践的アドバイス

EUの研究から得られた知見に基づき、アルロースを効果的に日常生活に取り入れるための実践的なアドバイスをまとめます。

最適な摂取量とタイミング

研究によると、アルロースの血糖値抑制効果を得るためには、1回あたり5〜10gの摂取が推奨されています。これは小さじ約2杯分に相当します。

効果的なタイミングとしては、以下が挙げられます:

  1. 食事の前(30分〜1時間前):食後の血糖値上昇を最大限に抑制できる
  2. 運動前:脂肪燃焼を促進する効果が期待できる
  3. 糖質を多く含む食事と一緒:血糖値の急上昇を緩和する

1日の総摂取量の目安は、体重60kgの人であれば約30g(小さじ6杯程度)が上限とされています。ただし、個人差があるため、少量から始めて体調を確認しながら徐々に増やしていくことが推奨されます。

アルロースを日常に取り入れる方法

実際の生活でアルロースを活用する方法としては、以下のようなものがあります:

  1. 飲み物の甘味料として:コーヒー、紅茶、ヨーグルトドリンクなどに砂糖の代わりに使用
  2. 料理の調味料として:甘めのドレッシングやソースの砂糖代替として
  3. 手作りデザートに:ゼリーやプリン、焼き菓子などの砂糖代わりに使用(ただし、加熱するとキャラメル化しにくいなどの特性に注意)
  4. 市販のアルロース含有製品を選ぶ:EU市場にも少しずつアルロース配合製品が登場している

なお、アルロースは砂糖よりも甘さが控えめ(約70%)なので、同じ甘さを求める場合は少し多めに使用する必要があります。また、砂糖と組み合わせて使用することで、砂糖の使用量を減らしつつ、満足できる甘さと食感を実現することも可能です。

注意点

アルロースは一般的に安全とされていますが、以下の点に注意が必要です:

  1. 一度に大量摂取すると、一部の人で消化器症状(お腹のゆるみなど)が現れることがある
  2. 極端な糖質制限食と組み合わせる場合は、栄養バランスに注意する
  3. 腎機能に問題がある方は、医師に相談してから摂取する
  4. 糖尿病の治療薬を服用している方は、血糖値が下がりすぎないよう医師の指導を受ける

アルロースは薬ではなく食品成分であるため、バランスの取れた食生活の一部として取り入れることが大切です。急激な効果を期待するのではなく、長期的な健康管理の一環として活用することをおすすめします。

まとめ:EUにおけるアルロース研究の現状と未来(続き)

現在の研究により、アルロースの主な特性と効果として以下が確認されています:

  1. 低カロリー(砂糖の約1/10のカロリー)で血糖値への影響が少ない
  2. 食後血糖値の上昇を抑制し、インスリン反応を穏やかにする
  3. 脂肪の代謝を促進し、体重管理をサポートする
  4. インスリン感受性を改善し、糖尿病予防に貢献する可能性がある
  5. 神経保護作用や抗炎症作用を持つ可能性がある
  6. 腸内環境の改善を通じて全身の代謝健康に良い影響を与える
  7. 口腔内細菌にも作用し、虫歯や歯周病の予防に役立つ可能性がある

これらの知見は、アルロースが単なる低カロリー甘味料としてだけでなく、多面的な健康効果を持つ機能性成分として利用できる可能性を示しています。

EUの研究機関や食品企業は、これらの科学的根拠に基づいたアルロース含有製品の開発を進めており、将来的には様々な健康機能を謳った製品が市場に登場することが期待されています。

ただし、アルロース研究にはまだいくつかの課題も残されています。より大規模で長期的な臨床試験、多様な対象者での効果検証、詳細な作用メカニズムの解明などが今後の研究課題として挙げられます。また、産業界では生産コストの低減や、味わいの最適化なども重要な課題です。

欧州食品安全機関(EFSA)による安全性評価が完了し、アルロースが「新規食品」として承認されたことは大きな進展ですが、今後も継続的な安全性モニタリングと規制の整備が進められることでしょう。

消費者の視点からは、アルロースは健康志向の高まりに合致した選択肢として注目されています。特に、糖質制限や血糖値管理に関心のある方々にとって、砂糖の代替として有望な成分となるでしょう。ただし、あくまでも健康的な食生活全体の一部として位置づけることが重要です。

EU内の研究者たちの地道な努力と革新的なアプローチにより、アルロースの可能性が科学的に解明され、その恩恵が広く社会に還元されることを期待しています。糖質摂取を控えつつ甘味を楽しめる、より健康的な未来へのカギとなるかもしれません。

よくある質問(FAQ)

アルロースは安全ですか?

はい、アルロースは欧州食品安全機関(EFSA)による安全性評価を通過しており、通常の摂取量であれば安全と考えられています。ただし、一度に大量摂取すると消化器症状が現れる可能性があるため、推奨される摂取量を守ることが大切です。体重60kgの人であれば、1日の上限は約30g程度とされています。

アルロースは本当に血糖値を下げますか?

アルロース自体は血糖値を下げるというより、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。EUの研究では、標準的な食事に5〜10gのアルロースを加えると、食後30分の血糖値が平均20%低下することが確認されています。ただし、個人差があり、効果の程度は人によって異なります。

アルロースで体重が減りますか?

アルロースは直接的に体重を減らすわけではありませんが、体重管理をサポートする可能性があります。カロリーが低いため、砂糖の代わりに使用することで総カロリー摂取量を減らせます。また、脂肪燃焼を促進し、食欲を抑制する効果も期待できます。EUの研究では、12週間のアルロース摂取で体脂肪率が減少したという結果も報告されています。

アルロースはどんな味がしますか?砂糖と違いますか?

アルロースは砂糖の約70%の甘さを持ち、味わいも砂糖に近いとされています。ただし、人によっては若干の冷感(口の中でひんやりとした感覚)を感じたり、後味が異なると感じることもあります。料理や飲み物に使う場合、砂糖よりも少し多めに使うと同程度の甘さが得られます。

アルロースは料理や製菓に使えますか?

はい、アルロースは多くの料理や製菓に使用できます。ただし、砂糖とは性質が少し異なるため、いくつかの注意点があります。例えば、加熱するとキャラメル化しにくい、焼き色がつきにくいといった特徴があります。パンやケーキを焼く場合は、温度や時間を調整したり、少量の砂糖と併用したりする工夫が必要かもしれません。

アルロースはどこで購入できますか?

EUでは、アルロースは新規食品として承認プロセスが進行中であり、現時点では一般的な食料品店での入手は限られています。健康食品専門店やオンラインショップでは、アルロースパウダーや粒状のものが販売されています。また、一部の健康志向の食品メーカーでは、アルロースを配合した製品の販売も始まっています。今後、規制が整備されるにつれて、より多くの製品が市場に出回ることが予想されます。

アルロースを使った健康的な生活のためのヒント

アルロースの研究結果を日常生活に活かすためのヒントをいくつか紹介します。

  1. 朝のコーヒーや紅茶に砂糖の代わりにアルロースを加えると、朝食後の血糖値スパイクを抑えることができます。
  2. 運動前のドリンクにアルロースを加えると、脂肪燃焼効果が高まる可能性があります。
  3. ヨーグルトにフルーツとアルロースを加えると、健康的でありながら満足感のあるデザートを楽しめます。
  4. 低糖質のお菓子作りに砂糖の代わりにアルロースを使えば、罪悪感なく甘いものを楽しめます。
  5. 糖尿病予備群の方は、食事前にアルロース入りの飲み物を摂ることで、食後血糖値の管理に役立つかもしれません。

アルロースは魔法の成分ではありませんが、バランスの取れた食生活と適度な運動を前提に、健康管理の一助として活用することができます。

参考文献

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